黄金の風

教員に向いてない教員向けブログ

教育相談を大切にすることは原理原則である、という話

教育相談とは

 日々の業務の中で、私が一番大切にしている、というか大切にしたいと考えているのが教育相談です。教育相談とは、要は生徒の悩みを聞いてあげたり保護者と話をしたりすることです。単なる個人面談と言えばそうだし、指導や助言と言えばそうですが、とにかく適切な助言をしたり考えを聞いてお互いの共通理解を図ったりすることを大切にしています。

 なぜこのようなことを大切にしているかというと、私は学級経営業務を会社や組織の経営業務だと捉えているからです。私は単なる「社長」ではありませんが「CEOなどの経営陣」の一人だと考えています。経営の話についてはまた別に書きたいと思います。

 

教育相談を大切にすることは、教員業務の原理原則

 そんな深い経営論でなくても、生徒や保護者と十分なコミュニケーションをとることは、考えてみれば教員として当たり前のことだと思います。教育相談を大切にし、その時間を多くとることは教員業務の原理原則であると私は考えています。

 このような考え方になったのは「ESBZ」というドイツの中高一貫校の実践をある書籍で読んでからです。この学校の取り組みの一つに「生徒は毎週金曜日に教員と個別面談をする」というものがあります。この学校では各生徒が自分の課題を設定して取り組む、というような活動をしており、それらの進捗状況や悩みの相談をして、お互いの理解を深める活動をしているそうです。

 この取り組みが紹介されているのは経営本ですが、この本に紹介されているどの組織も、組織の人間の「共通理解」みたいなものを大切にしており、そのための「コミュニケーション」をどうやって工夫して行うか、その方法が紹介されているように感じました。

※「ティール組織 ー マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」という書籍です。ちょっと長いですが、私が学級経営を考える上でのヒントがたくさんありました。

 

本の学校の本質的な問題点の一つ

 教育相談、生徒や保護者とコミュニケーションをとり、そこにある程度の時間を割くことが原理原則であるのですが、私が働いている日本の中学校ではこの原則が大切にされていないと感じます。1日の生活を見てみると、私たちの日々の業務のどこにそんな時間があるのでしょうか。朝から夕までキッチリ組み込まれた時間割、もはや昼休みや掃除の時間を取ることにも苦労しているのに、どこに子ども達が「相談したい」と思える時間帯があるのでしょうか

 さらに、私たちの業務もそうです。授業時数は週に5+6×4=29時間ほどありますが、私が経験してきた中で人員がたりている時でも、20時間以上入っていることがザラです、それでスタッフに一人欠員が出ると結果的に25時間以上、1日に1時間空き時間があるかないかの状態になります。そうして得られた空き時間には生徒や保護者にはあまり関係ない仕事や部活動などの書類作成業務など(例えば予定表を作り込んで上に報告)、そんな感じのことが待ち受けていて、それはそれで集中しなければあっという間に退勤時間は20時を超えてしまいます。

 

原理原則の対立

 また、放課後も教育相談は難しいです。なぜなら部活動が始まってしまうからです。部活動にやる気があるとか、そういう話ではありません。部活動が生徒の自主的な活動だとしても、学校教育の一環という名目でなされている以上、学校側の安全配慮義務がありますので、グラウンドや体育館、文化部であっても教室に誰か教員がいることが「原則」となります。そうすると、放課後ゆっくり生徒や保護者と話している時間は、仕事の予定としては事実上ないことになってしまいます

 さらに生徒側も、部活動を無断で欠席できないというプレッシャーに駆られてそそくさと部活に行ってしまいます。確かに放課後の部活動が楽しみなことはわかりますが、そのような理由で1日の大半を過ごす教室や校舎での生活を疎かにして良いものでしょうか。部活動でプレッシャーをかけるような指導をしている先生方も、もう一度考えて欲しいのです

 

何が問題であるのか、整理する

 最終的に我々が教育相談をするのは、生徒が限界を迎えて泣きながら授業を抜け出してしまった日中、そんな時になってしまいます。しかし、よくよく考えてみれば、これは最悪のパターンではないでしょうか。そもそも教育相談とは生徒が学校生活を充実させ、例えば授業などの活動にしっかり取り組めるように支援を行う、と言ったのものであり、「相談したいために授業を抜け出している」というのであれば、それでは本末転倒です。先生方の中には、授業で抜け出している生徒を温かく迎え(それは当たり前です)、「今日は素晴らしい支援ができた」と放課後笑顔になっている方もいらっしゃいますが、その姿勢は本質的に間違っているのではないかと私は思います。(現在の学校教育の仕組みでは)授業が大切であるから、そうなる前にどこかで教育相談の場を設けて支援をして、授業をしっかり受けてもらう、という指導をするのが筋ではないでしょうか。

 

教員業務で何が大切なのか、何を優先させるべきなのか、考えを持つ

 上で述べたことを整理すると、私は現在の公立学校は、「教育相談」を「大切にしていない」という仕組みや組織になっているのではないかと感じます。しかし、現場の教員の皆さんやこれから教員を目指す方々に考えていただきたいのは、それは「間違っている」ということです。本来であれば「ESBZ」のように、できるだけ個別面談等を行い、生徒一人一人の成長や歩みを理解してあげたり、何か困ったことがあれば助言して、生徒のメンター的な役割になる。さらに、保護者に対してもそれなりに機会を設け、各家庭の教育面でのニーズに応えられるよう情報提供したりするなどの支援をする、という立ち回りというか経営をしていくことが、私たちの仕事ではないでしょうか。「学校」の雰囲気に流されて、教育相談を大切にできない教員になってはいけません